フクミツ副業コラム
副業の悩み

会社員の副業禁止は違法?就業規則の読み方と判例から見た現実【2026年版】

フクミツ編集部|2026-06-01 公開

この記事の結論

  • 民間企業の会社員の副業を直接禁止する法律はなく、労働基準法にも副業禁止規定は存在しない
  • ただし多くの会社の就業規則では副業を「禁止」または「許可制」にしており、違反は懲戒理由になりうる
  • 公務員は国家公務員法・地方公務員法で別ルール。判断に迷う場合は所属先と弁護士・社労士への相談が現実的

「副業禁止って法律で決まっているの?」「就業規則に禁止と書いてあるけど従う義務はある?」という疑問は、会社員の副業相談で目立つテーマです。結論を先に書くと、民間企業の会社員に対して副業を直接禁止する法律はありません。労働基準法にも副業を禁じる条文はなく、政府の方針も2018年以降は副業推進に傾いています。一方で多くの会社の就業規則には副業に関する規定があり、その内容次第では懲戒の根拠になります。本記事では法律と就業規則の関係を整理し、自分の会社の規程をどう読めばいいかを2026年6月時点の情報で解説します。

会社員の副業を禁止する法律は存在しない

民間企業に勤める会社員の副業を直接禁止する法律はありません。労働基準法・労働契約法・民法のいずれにも「副業をしてはならない」という条文は置かれていません。 憲法第22条で職業選択の自由が保障されており、勤務時間外に何をするかは原則として労働者の自由とされるのが法律家の一般的な整理です。労働契約は「決められた時間に労務を提供する」契約であり、それ以外の時間まで会社が支配するわけではありません。 実際、厚生労働省が公開している「副業・兼業の促進に関するガイドライン」でも、副業の推進が国の方針として明記されています。2020年・2022年の改定で、副業・兼業を認める方向で就業規則を見直すよう企業に促す内容が盛り込まれました。 つまり「副業は違法」という前提自体が誤りで、出発点は「法律上は自由」です。問題になるのは、その上に重なる「会社との契約(就業規則)」のレイヤーです。

就業規則で禁止される理由と、規定が持つ意味

法律上は自由でも、多くの会社が就業規則で副業を「禁止」または「許可制」にしているのが実態です。理由として整理されるのは次の4点です。 ・職務専念の義務(労働契約上の付随義務):勤務時間中・勤務日に十分な労働力を提供できなくなる懸念 ・秘密保持の必要性:自社情報・顧客情報が副業先に流れるリスク ・競業避止の発想:競合他社での副業による利益相反 ・労務管理上の都合:労働時間通算、健康管理、長時間労働の防止 ここで重要なのは、就業規則は「会社と労働者の契約内容」であり、合理的な範囲内であれば従う必要があるという点です。労働契約法第7条で就業規則の効力が定められており、内容が合理的で周知されていれば契約として機能します。 したがって「法律で禁止されていないから、就業規則を無視していい」という結論にはなりません。就業規則違反は会社との契約違反にあたり、懲戒の根拠になります。問題は「規定の中身が合理的か」「実際の副業が規定に該当するか」という解釈の話に移ります。

就業規則の読み方:典型的な3タイプを見分ける

就業規則の副業規定は、表現や運用で次の3タイプに分かれることが多くなっています。自社の規程を開いて、どのタイプにあたるかを確認するところから始めます。 【タイプA:全面禁止型】「従業員は会社の承認なくして他に雇われ、または営利を目的とする業務を行ってはならない」という形。形式上は副業全般を禁止しますが、運用で「会社の承認」を広めに認める企業もあります。 【タイプB:許可制(申請制)型】「副業を行う場合は事前に申請し、許可を得る」という形。近年増えているタイプで、許可基準として「本業に支障がないこと」「秘密保持・競業避止に反しないこと」などが列挙されます。厚労省のモデル就業規則も2018年改定でこのタイプに近い書きぶりに変更されました。 【タイプC:限定禁止型】「同業他社での就業の禁止」「会社の信用を損なう業務の禁止」など、対象を絞って禁止するタイプ。許可制と組み合わせている例も多い形です。 読むときの目安は、「副業」「兼業」「他の業務」のキーワードで規程内を検索し、「禁止」「許可」「届出」のどの動詞で書かれているか、「本業に支障がない範囲」などの限定条件があるかを確認することです。違反時の処分(懲戒)が別条文でどう規定されているかも合わせて見ておきます。社内ポータル・人事規程集・組合資料のいずれかで読めることが多く、見つけられない場合は人事部に問い合わせる形になります。

判例から見る「会社が副業を制限できる範囲」

就業規則で副業を禁止していても、会社の懲戒権が無制限に認められるわけではありません。日本の判例は「副業は労働時間外の私的活動であり、原則として労働者の自由」という前提に立ち、副業を理由とした懲戒が許される範囲を限定的に解釈してきました。 代表的なのが小川建設事件(東京地裁 昭和57年11月19日)です。会社の許可なく深夜のキャバレーで長時間アルバイトをしていた従業員の解雇が争われた事案で、裁判所は「副業が本業に実質的な支障を生じさせる場合に限り、懲戒の対象となりうる」という方向性を示しました。本業の労務提供に具体的な悪影響があったため、解雇は有効と判断されています。 裁判例の傾向としては、本業の勤務時間外で業務への具体的支障が確認できない場合、競業関係になく自社の秘密情報も使っていない場合、社会的相当性を欠く活動とまでは言えない場合には、懲戒・解雇が無効と判断されやすいとされています。逆に、競業他社での就業・本業の情報を使った活動・長時間化による本業への支障があった場合は、懲戒が有効と判断された例が報告されています。 2018年以降の厚労省ガイドライン改定もこの方向と整合的です。ただし個別事案の判断は事実関係に依存するため、具体的な解雇・懲戒の争点は弁護士・社労士への個別相談が現実的です。

公務員は別ルール|会社員との違いを整理する

ここまで整理してきたのは民間企業の会社員のケースです。公務員は法律のレイヤーから違っており、同じ「副業」という言葉でも前提が大きく変わります。 国家公務員には国家公務員法第103条(私企業からの隔離)・第104条(他の事業又は事務の関与制限)が、地方公務員には地方公務員法第38条(営利企業等の従事制限)があり、営利目的の副業に対しては事前の許可が原則として求められます。違反すれば懲戒の対象です。 会社員が「就業規則という会社内の契約レイヤー」で副業を制限されるのに対し、公務員は「法律のレイヤー」で制限されているという構造の違いがあります。「公務員でも副業できると聞いた」という情報の多くは、不動産賃貸・農業・執筆・地域貢献など、許可の範囲内で認められる例外を指しているケースが大半です。 公務員の制度面の詳細は別記事に整理しています。家族・知人に公務員がいる、自分が公務員から民間に転職した直後など、混同しやすい場面では一度切り分けて理解しておくと判断がぶれにくくなります。

禁止の会社で副業した場合のリスクと、現実的な進め方

「就業規則で禁止だけど、ばれなければ問題ない」という発想は、結論としておすすめできません。会社にバレた場合の処分は、就業規則の内容と副業の実態次第で、口頭注意・始末書から、減給・降格、さらに諭旨退職・懲戒解雇まで段階的に分かれます。競業他社での就業・長時間化による本業への支障・信用失墜行為などが伴うほど処分は重くなる傾向です。さらに住民税の経路で発覚するリスクも残り、就業規則違反である以上、発覚時の処分リスクは独立して残る点に注意が必要です。 現実的な進め方として、次の順序で確認していくと判断しやすくなります。 1. 就業規則の副業規定を読み、タイプA・B・Cのどれに該当するかを把握する 2. 許可制であれば、副業の内容と時間・収入の見込みを整理して人事に申請する 3. 全面禁止の場合は、自社の運用実態(許可された例があるか)を確認する 4. 申請が難しい場合は、就業規則に抵触しない範囲を見極めるところから始める 5. 判断がつかない場合は、社労士・弁護士に個別相談する 副業の方向性が見えないうちに就業規則の議論だけ進めても、判断材料が増えにくいことがあります。在宅型の業務委託・スキマ時間で進めやすい活動・初期費用を抑えやすい領域など、どの方向が向いているかが整理されていない段階では、[副業診断](/shindan/)で選択肢を一度俯瞰してから、就業規則の確認に戻る進め方が無理がありません。

よくある質問

Q. 会社員の副業を禁止する法律はありますか?

民間企業の会社員に対して副業を直接禁止する法律はありません。労働基準法をはじめ、労働関連の法律に副業禁止規定は置かれていません。憲法第22条の職業選択の自由が前提となるため、副業の可否を決めるのは会社ごとの就業規則というのが法律家の一般的な整理です。ただし公務員は国家公務員法・地方公務員法で別の制限を受けるため、民間と同列には扱えません。

Q. 就業規則で禁止されている副業をすると違法ですか?

「違法(法律違反)」ではありませんが、会社との契約違反にあたります。労働契約法第7条で就業規則は契約の一部として機能するため、就業規則違反は懲戒(口頭注意・減給・降格・解雇など)の根拠になりえます。違法性と契約違反は別の概念であり、法律で罰せられるわけではない一方、会社内の処分は受ける可能性があるという整理になります。

Q. 副業禁止の就業規則は無効にできませんか?

「禁止規定そのものが一律に無効」と判断された判例は確認されておらず、規定の合理性は事案ごとに判断されます。判例の傾向としては、本業への具体的支障・競業関係・秘密漏洩などが認められれば懲戒は有効、それらがなく労働時間外の私的活動と評価される場合は懲戒が無効と判断された例があるという整理です。「規定があるから即懲戒」でもなく「規定があっても無視できる」でもないため、個別事案の判断は弁護士・社労士への相談が現実的です。

Q. 厚労省のモデル就業規則では副業はどう扱われていますか?

厚労省が公開しているモデル就業規則は、2018年改定で副業・兼業を原則認める内容に変更されました。「労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる」という条文と、申請・届出制で必要に応じて制限する仕組みが組み合わされた書きぶりです。各企業はこのモデルを参考に自社の就業規則を整備しており、許可制(申請制)型の規定が増えている背景にもなっています。

Q. 副業がなぜ禁止されている会社が多いのですか?

主な理由は4点です。1つ目は職務専念義務の確保で、本業に十分な労働力が向かなくなる懸念。2つ目は秘密保持で、自社情報や顧客情報が副業先に流れるリスク。3つ目は競業避止で、競合他社への利益移転を防ぐ目的。4つ目は労務管理上の都合で、副業時間の通算や長時間労働の防止が必要になる点です。法律で禁止されているからではなく、会社側のリスク管理として規定されているという構造です。

Q. 副業を申請したら却下されました。従う必要がありますか?

就業規則が許可制であり、許可基準に基づいて判断された却下であれば、原則として従う必要があります。ただし、却下理由が不合理(例:明確な業務支障がない、競業関係もない、申請者個人への不利益扱いが疑われるなど)と感じる場合は、人事部への再確認・社内相談窓口・労働組合への相談・最終的には弁護士・社労士への相談で争う余地があります。感情的に反論する前に、申請内容と却下理由を文書で確認しておくと整理が進みやすくなります。

Q. 公務員と会社員で副業ルールは何が違いますか?

規制のレイヤーが違います。会社員は「就業規則という会社内の契約」で制限されるため、会社ごとに内容が異なります。一方、公務員は「国家公務員法・地方公務員法」という法律で営利企業への従事が原則禁止されており、許可制で例外的に認められる範囲があります。会社員は法律上は自由・契約で制限、公務員は法律で制限・許可で例外という構造の違いとして覚えておくと整理しやすくなります。詳細は公務員副業の解説記事を参照してください。

Q. 就業規則を読まずに副業を始めるとどんな問題がありますか?

後から「全面禁止だった」「同業他社禁止に抵触していた」と気付くケースで、懲戒の対象になるリスクが残ります。許可制だった場合、無申請のまま続けると規定違反として処分対象になりえます。また、住民税経由で発覚した場合に「規定を知らなかった」という説明は責任を免れる根拠になりにくいのが実務的な扱いです。副業を始める前に就業規則の副業規定を一度読み、タイプを把握してから動き出すのが現実的な順序です。

参考リンク

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